「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」
滝本竜彦「ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ」(角川文庫)を読んだ。
主人公の高校生山本陽介は、物語の冒頭の方の友人渡辺との会話で
「だからさ、アレだ。つまり、なにも信じるものがなくて、不安だ、と。そして毎日の生活に潤いがない、と」
と嘆く。
まあ、いつの時代の高校生でも思うことだよなあ。
で、いつか自分にもなにか、すごいことが起きないかと、熱望しているわけだ。
しかし、おれには何も起きなかったなあ。
なにも、アクションをおこさなかったんだから、あたりまえだけど。
だけど、山本君は偶然、チェーンソーを振り回す男と戦う絵里ちゃんという女子高生に出会ってしまう。
チェーンソー男は、なんのために出現するのかよくわからないし、絵里ちゃんがチェーンソー男と戦う理由もかなり薄弱だ。
それでも、山本君には、チェーンソー男も絵里ちゃんも、自分の味気ない日常を変えてくれる、極上のスパイスだったのだ。そして、それは誰もが待ち望みながらも、とうとう大人になるまで訪ずれないモノなのだ。
物語に不安定性があるものの、それがより完成型に近い「NHKにようこそ!」に較べて、青春という瞬間を描くには、いい方に作用している。
後味がさわやかな青春小説だ。
ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ
滝本 竜彦
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