脂肪のかたまり
脂肪のかたまり (岩波文庫)
Guy De Maupassant 高山 鉄男
モーパッサン「脂肪のかたまり」(岩波文庫)を読んだ。
映画「駅馬車」の元ネタと言われる本である。
いろんな階級の人間が行動をを共にしたらどういうドラマが起こるかというお話である。
そう言い出すといろんな作品の元ネタかもしれない。
「ポセイドン・アドベンチャー」とか。
普仏戦争でプロシャ軍に占領された町から、フランス軍のいる町まで行こうと考えたフランス人たちが、いっしょの馬車に乗り込む。
乗客は成金や貴族や修道女や娼婦。
車内で他の乗客からあからさまに軽蔑される娼婦。
しかし、おりからの雪で馬車は進まずなかなか次の宿場にたどりつけない。
みんなが空腹を覚えるが、誰も食料を持っていない。
そんななか、娼婦だけは用意周到に弁当や酒を持ってきていた。
人間てそういうもんだなというのがわかる面白い小説である。
この小説で、精神も行動も一番立派なのは娼婦であり、社会的に立派な地位や金がある他の人間たちはただひたすら自分のためだけに生きている。
それがモーパッサンの人間観察の末の結論だろう。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント