村上龍 「五分後の世界」
五分後の世界 (幻冬舎文庫)
村上 龍
村上龍「五分後の世界」(幻冬舎文庫)を読んだ。
今の日本のダメさをうまく表現するにはどうすればいいか。
村上龍は、今の日本に生きる人間を「別の日本」に置いてみればいいじゃないかと考えた。
箱根に女と遊びに来ていた主人公小田桐は、いつのまにか別の日本に迷い込んでしまう。
そこは、第二次大戦終結後も日本人たちが、占領された日本でゲリラ活動を続けている世界だった。
日本人たちは、地下に迷宮のような都市を作りだし、あちこちのトンネルから出撃しては国連軍と戦闘する。
そこで小田桐は、スパイと疑われ最前線に送られて何もわからず、戦闘に参加する。
そうしていくうちにだんだんと価値観が覆されていく。
そして、生き残って地下都市に帰ってきたときに、現在の日本からは失われてしまった光景を目にする。
活き活きとした少年少女たち。
食堂でお互いを思いやりながら食事する家族。
化粧もせず、地味な服装ながらもそれでいて美しい女性。
占領後、アメリカ文化の猿真似をするうち日本は大事な何かを失ってしまったのではないか。
そう問いかけをしてくる小説である。
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