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2010/01/21

二重標的

今野敏「二重標的 東京ベイエリア分署」(ハルキ文庫)を読んだ。

TBSドラマ「ハンチョウ」の原作、安積班シリーズの1作目。
舞台は東京湾臨海署。現在のようにマンションがたくさんできる前で人口が少ないので、警察署の規模も小さく人員も少ない。しかし、東京湾岸で起こった事件には、必ずかりだされるので管轄はとても広い。
だから安積警部補やその部下たちは常に忙しい。
その過酷な現実のなかで、刑事たちが犯罪者逮捕に向けて、時には対立しながらも、真相にせまっていく。
主人公の安積警部補は、他の推理小説のように、天才的な推理能力を発揮するヒーローではない。
上司に無理難題を押し付けられ、部下が何を考えているのかよくわからない、中間管理職にすぎない。
それでも 弱音を吐かずがんばる姿に、組織の中で働くのも悪くないという気持ちになるのである。

二重標的(ダブルターゲット)―東京ベイエリア分署 (ハルキ文庫)
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2010/01/16

玻璃の天

北村薫「玻璃の天」(文春文庫)を読んだ。

ベッキーさんシリーズ第2弾。
シリーズ第3弾の「鷺と雪」で直木賞を受賞したのは、みなさんご存知のとおり。

「円紫さんと私シリーズ」の主人公の女子大生は、あまりに清純すぎてこんな子絶対にいねーとツッコミを入れながら読んでいたが、昭和初期の上流階級の令嬢が主人公のこのシリーズだと、あの時代ならひょっとしたらと思えてくる。
この主人公の令嬢付きの運転手兼ボディガードがベッキーさんである。
このベッキーさんが博学でしかも、射撃の腕も一流。
で何か謎があると主人公はベッキーさんに相談するのである。
今回は、そのベッキーさんの過去が明らかになる。
最近は、長いシリーズものが多いが、このシリーズはいさぎよく三巻で簡潔らしい。
さて「鷺と雪」を今すぐ買うか、文庫になるまで待つか悩ましいところである。

玻璃の天 (文春文庫)
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2010/01/02

したくないことはしない 植草甚一の青春

津野海太郎「したくないことはしない 植草甚一の青春」(新潮社)を読んだ。

担当編集者によって書かれた植草甚一氏の評伝である。

前衛演劇にのめりこんだり、映画館の支配人をしたりと好きなことをしながら戦後を迎え、映画評論やミステリー評に加えジャズの批評で晩年に一大ブームを巻き起こした植草甚一。
そのイメージからは、我が道を突っ走る暴走機関車のような感じがするが、意外と自分ではコンプレックスをかかえていたのではないかと著者は分析している。
また、戦後からブレイクするまでの中年期は金銭的にも苦しかったのではないかとのこと。
でもおれには好きなことだけやって、死ねたんだから本望だとおもうのだが。

したくないことはしない
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2010/01/01

東洲しゃらくさし

東洲しゃらくさし (PHP文庫)
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あけましておめでとうございます。

今年もあまりやる気なし。
できれば今年こそ仕事をやめたい。
何もしたくない。

松井今朝子「東洲しゃらくさし」(PHP文庫)を読んだ。

時は寛政の改革後の江戸に活気が戻ったころ、上方の人気歌舞伎作者並木五兵衛が江戸の芝居小屋からヘッドハンティングされる。前に江戸で舞台を見たことがあった五兵衛は、その貧弱な舞台装置が気にいらず、どうせ自分が行くならと、舞台装置もあっと言わせるものにしようと考える。そこで道具方大工の十次と大道具の彩色方の彦三をいっしょに連れて行こうと考えた。そして絵のうまさを見込んで、彦三に先に江戸に下って、江戸の様子を絵で知らせてよこせと頼む。

物語は作者得意の芝居の薀蓄とからめて進んでいき、写楽の謎よりも、五兵衛が江戸で作者として成功できるかの方に関心がいってしまう。もちろん写楽がなぜ短期間で消えたかも納得がいく結末が用意されているが。

ともかくデビュー作でこれを書いてしまう松井今朝子は、おそろしい作家なのであった。

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