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2012/05/11

これがおれが待っていた小説だ

根津権現裏 (新潮文庫)
藤澤 清造

根津権現裏 (新潮文庫)
新潮社 2011-06-26
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藤澤清造「根津権現裏」(新潮文庫)を読んだ。

いやあ、すばらしい。
これほどの傑作が今まで埋もれていたとは信じられない。
いままであまたいた文芸評論家の目は節穴か?
出版社の編集者にしても、この傑作を探し出して復刊する奴がいなかったとは、日本の出版界のレベルは低すぎると言わざるを得ない。

確かに漱石や太宰の小説の主人公たちも苦悩するが、この小説の主人公の苦悩と較べたら、それはおぼっちゃまの苦悩である。
漱石や太宰の小説の主人公たちの苦悩が人間関係から生まれる精神的なものなら、この小説の主人公の苦悩は、金がないための肉体的な苦悩なのだ。
そして、貧乏なのに女にはもてる川崎長太郎の小説の主人公と違い、この小説の主人公は貧乏ゆえに女と別れてしまったのだ。
主人公とその友人との会話がいい。
自分たちに金があったらどうするかを語り合うのだが、主人公はまず女を買いにいくといい、友人は書籍が買いたいという。しかし突然自分たちにはまとまった金が入るあてなど全然無いことに気づくのだ。

もう全編、全世界の貧乏で非モテのために書かれた、我々の傷に塩をぬり込むような恐ろしい小説である。
しかし、主人公の考えやセリフにいちいちうなずき、最後には、自分の生まれの不幸と小説のすばらしさに涙せずにはいられないのである。

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